アフリカ開発銀行の事業とグローバル・バリューチェーン(GVC)

アフリカ開発銀行の事業とグローバル・バリューチェーン(GVC)

グローバル・バリューチェーンは、世界の国々を世界中の生産および貿易に結び付ける重要な手段です。アフリカの工業化を始め、大陸の変革というアジェンダにこれを活かすためには、それに関わる国々や、当銀行グループを含む開発パートナーが十分な準備を行うことが必要となります。その際には、世界経済とつながることにより得られる技術の向上や雇用創出といったメリットを最大化する方法、そして、農民や都市部の産業労働者のようなチェーンの末端に位置する人々もこうしたメリットを享受できる方法が模索されなければなりません。


過去10年間において、アフリカ経済は平均5%程度成長しています。2014年のアフリカのGDP成長率は、2013年の3.5%からほんのわずか向上し3.9%でしたが、これは世界経済の成長率である3.3%よりも高い数値です。しかしながら、このような成長がアフリカの貧困や格差の適切な削減へと転換してはいません。アフリカのインクルーシブな成長のためには、構造的な変化が鍵となってきます。このような構造的変化の重要な要素としては、世界市場におけるアフリカの競争力を高めること、アフリカがグローバル・バリューチェーンにおいてさらに高いレベルに移行することなどがあげられます。


こうした高い成長をけん引したのは天然資源ブームとそれに関わる経済活動であり、新興国からの需要が南南貿易や投資を促進し、グローバル・バリューチェーンへとつながる下地を構築する要因となりました。規模の大きい中所得者層が拡大傾向にあり、地域経済の統合が進行している現在、アフリカ大陸自体が一世代のうちに世界経済における成長の極となる可能性は十分にあると言えます。けれども、明るさを増すアフリカの見通しの影には、不平等の拡大や過半数を占める貧困層が経済活動に十分に組入れられていないという問題があります。構造的変革と持続可能な開発に向けた幅広い努力を続けるアフリカにとって、GVCの構築を推し進めることは、追加的方法論だと言えるでしょう。


一つの国が地域またはグローバルなバリューチェーンに参入し、その利益を享受するためには、ロジスティクスを改善し、優れた情報ネットワークを持つことが必要となります。このため、新たな輸送システムや情報通信技術(ICT)の構築に投資してきた国は、輸送コストを低く抑えることができ、情報へのアクセスも確保できることから、モノやサービスの貿易から生じる利益を享受し易い環境にあります。これがグローバル・バリューチェーンの参加者間において労働力の空間的分離を促進しており、その土地の競争優位性に従い特定の生産プロセスが特定の地域に集約されています。


GVCに参加しているアフリカ企業の数はまだ少なく、参加している企業もほとんどがチェーン末端の採取産業、農業に従事しています。このため、チェーンで生じた付加価値の大部分は依然として豊かな国の企業に吸収されています。農業部門ではココアやコーヒー、紅茶、採鉱部門では銅や鉄がその好例と言えるでしょう。例えば、アフリカは世界最大のカカオ豆の生産者ですが、その90%は原料のまま、または半製品の状態で輸出されており、磨砕は大陸外で行われています。したがって、西アフリカ諸国のココア生産者が受け取る利益は、最終製品であるチョコレートバーの価格の約5%に過ぎません。ココアのバリューチェーンで生まれた価値のほとんどは、生産国以外の国の企業に渡っているのです。問題の一因は、いびつな関税体系や、貿易歪曲性を高める貿易補助金にあると考えられます。例えば、原材料のカカオ豆の無関税輸入が許可される一方で、半製品のココア・ペーストや銅棒・銅線には禁止関税を課すなどです。これまでは、利用できる機会を活用するための産業政策や戦略が十分に施行されていない、またはそれらが存在しないことなどが、グローバル・バリューチェーンへの完全な参加を妨げる主因となっていました。


現在は、コスト面での優位性や戦略的に有利なロケーション、そしてモノやサービスの消費者としてアフリカが台頭してきたという事実といった一連の要素から、アフリカはGVCが確立できる場となっています。アフリカが天然資源において比較優位を持っていることに疑問の余地はなく、これがGVCへ参加する上での有望な足掛かりとなるでしょう。さらに、現行の開発ペースを踏まえると、生産コストの上昇を前により安価な労働力の得られる土地へと企業が生産の一部移管を迫られているアジアからアフリカへと、労働集約型産業を呼び込むことができるはずです。


戦略と政策に関し、向こう10年間のアフリカ開発銀行の事業は、GVC支援も含め、2013年から2022年の期間をカバーする当行の10年戦略に沿って行われます。GVCに関連する数々の活動が農業、輸送、ICT、その他の公共事業、そして民間セクターの事業にも組み込まれています。農業部門での当行の取り組みの一例には、ウガンダでのコミュニティ農業とインフラ改善計画や、ナイジェリア農業改革計画への支援プログラムなどがあります。前者は、バリューチェーンのアプローチを通じて農民の生活にもたらした影響が評価され、2013年の米財務省のアワードを受賞しました。また、後者は農場での生産レベルから最終製品までにつながる農業のバリューチェーンを構築するというナイジェリア政府の目標を支援するものです。


民間セクター

アフリカ開発銀行の民間セクター事業は、アフリカでのGVC確立を直接的、間接的に支援する主要な経路となっています。最近手掛けた貿易金融に関わる事業、そして他の機関との協調融資事業の多くは、こうしたGVC支援を念頭にデザインされています。この分野における当行の活動で最も重要なものは、直接融資や資本参加、そして、より商業的側面の強い銀行に向けたクレジットラインを通じた、アフリカの中小企業の資金調達支援です。また、民間セクターが行っているアフリカ農業の近代化のための融資も重要な活動と言えます。


アフリカ50とその他の融資手段

当銀行グループは2013年に、年金基金などのアフリカの資金源から資金を引出すほか、海外からのターゲットを絞った投資により資金を補充し、大陸における影響力あるインフラ事業に資金を提供するアフリカ50基金を立ち上げました。こうした活動を通じ、アフリカ50は、GVCの発展と切り離すことのできない基金となるでしょう。