アフリカ投資フォーラム2024、アフリカの農業・エネルギー革命における日本の役割を強調

アフリカ開発銀行(AfDB)のアデシナ総裁は、アフリカ投資フォーラム(AIF)2024マーケット・デイズの本会議において、アフリカにおける農業とエネルギーのポテンシャル、また、日本とアフリカの連携強化及び日本の技術とイノベーションが果たす役割を強調しました。Japan Special Roomは2部構成で行われ、約100名の日本人が参加し、デジタル・ソリューション、技術、ビジネスモデルが、アフリカにどのような変革をもたらすかが紹介されました。2030年までに世界の食料・農業市場は約1兆ドルに達すると予測されており、世界の耕作地の65%を有するアフリカ大陸は大きなポテンシャルを秘めています。

農業におけるデジタル革命

Space Shiftは、ナイジェリアで衛星技術を使った農作物のモニタリングを実施しています。Chief Business Officerである多田氏は、同社のAI搭載システムが光学衛星とレーダー衛星のデータを組み合わせることで、雲に覆われていても作物の成長や収穫時期の予測、過去の農業記録を継続的にモニタリングできると説明しました。この技術は、農家のクレジット・スコアリング向上にも貢献し、また、農業の意思決定にも役立っています。

AAIC Partners Africa LimitedのDirectorである石田氏は、ルワンダとタンザニアにおける同社の成功事例を紹介しました。IoTソリューションと衛星技術の最適化を通じ、同社は2か国で約1,700ヘクタールのスマート農業プロジェクトを実施しています。これは、日本の技術がアフリカの大規模農業経営を変革させる良い事例となっています。

VunaPayは、農作物を出荷した後すぐに農家が支払いを受け取ることができるデジタル・プラットフォーム供給しています。COOの松野氏は、農家が農作物の代金を受け取れるのは出荷から6ヶ月後になることもあると述べ、農業セクターの喫緊の課題に対する同社のソリューションについて説明しました。

Green CarbonのManagerである原田氏は、農業分野で炭素クレジットを生み出す同社のビジネスモデルを紹介しました。バイオ炭や水田の間断灌漑(AWD)を通じ、メタン排出を30〜50%削減すると同時に、農家にとって貴重な炭素クレジットを生み出しています。

戦略的パートナーシップの枠組み

国際協力機構(JICA)からは、海外投融資担当次長である若林氏がプレゼンを行いました。若林氏は、農業開発に関するJICAの包括的な支援について説明し、気候変動に強い農業、食料安全保障の強化、金融包摂の促進、の3つの重点分野を強調しました。

AfDBのDirectorであるオフォリ=マンテ氏は、日本組織と連携した成功事例として、日本政府との「アフリカの民間セクター開発のための共同イニシアティブ(EPSA)」や、三菱商事のような日本の大企業との継続的なパートナーシップを挙げました。

グリーンへの移行とデジタル・ソリューション

 Uncovered Fundは、アフリカのスタートアップ企業支援に特化しています。企業には、気候変動技術企業や電気自動車(EV)バッテリー・サービス・プロバイダーなどが含まれており、アフリカのネット・ゼロを支援しています。CEO兼General Partnerの寺久保氏は、「Uncovered Fundは単に資金を提供するだけでなく、日本の技術もスタートアップに提供している」と述べました。

日立エナジーもまた、クリーン・エネルギーへの転換とカーボン・ニュートラルに取り組む企業の一つです。同社は、再生可能エネルギーを都市部や農村部に供給するインフラ・プロジェクトを実施しており、アフリカの電化に貢献しています。Executive & Global Sales Managerのタヒリ氏は、問題を特定し電力供給を維持するために情報を可視化するデジタル化の重要性、アフリカの電力アクセスを支援しながらクリーン・エネルギーを統合する電力網への投資の重要性を強調しました。

みずほ銀行は、アフリカの金融機関との強力なパートナーシップを通じて、アフリカとアジアの架け橋となってきました。Executive Directorのベロ=オサギ氏は水素とクリーンクッキングに焦点を当て、「クリーンクッキングに関しては、アフリカの5人に4人が有害なガスにさらされている。」と述べました。

エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は、エネルギーと鉱物資源の安定的かつ安価な供給を確保することをミッションとして掲げています。JOGMECのDeputy General Managerである内田氏は、JOGMECは水素・アンモニア分野で価格差に対する支援を行なっており、低炭素水素社会の推進に努めていると強調しました。

日本貿易保険(NEXI)のアフリカにおけるビジネスは、過去20年間、年率18%の成長を続けています。General Managerの秋田氏は、エジプトの風力発電やケニアの太陽光発電など、同社が保険を引き受けたプロジェクトを紹介しました。同氏は、「今後数年間で、約50億米ドル相当のプロジェクトが積み上がっている」と述べました。

行動に移せ

経済同友会の中東アフリカ委員会委員長ある渋澤氏は、第2セッションのMCを務めました。渋澤氏は日本の参加者に対し行動へ移すよう呼びかけ、「日本には技術も人材も資金もあるが、欠けているのは行動力」と指摘し、日本企業がアフリカで行動しないことで機会損失が生まれていると述べました。

アフリカに対する日本の長期的なコミットメント

財務省副財務官である藤井氏は、ビデオメッセージで閉会の挨拶を行いました。藤井氏は、「日本は1973年にアフリカ開発基金(ADF)に初めて拠出して以来、長年に亘りAfDBに対しコミットしている」と強調しました。2006年にはEPSAが設立され、日本は現在までに約90億ドルの資金を供与しており、先駆的な役割を担っています。藤井氏はJapan Special Roomで紹介された日本のソリューションや革新的なビジネスモデルが、アフリカの課題に対処しアフリカの潜在力を引き出す、「真のゲーム・チェンジャー」となり得ると強調しました。

TICAD 9を見据えて

2025年8月に横浜で開催される第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)や、ADFの第17次増資交渉が目前に迫り、日本とアフリカのパートナーシップはさらに拡大する見込みです。AfDBの野元理事の主導により、Japan Special Roomは、昨年の日本人参加者80名に対し今年は100名の増員に成功しました。日本の技術と投資、そしてアフリカの農業とエネルギーの可能性が融合することで、持続可能な開発と食糧・エネルギー安全保障の機会が生まれ、日本とアフリカの関係に新たな1ページが刻まれることが期待されます。

 

プレスリリース原文はこちら(英語)

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