脆弱国におけるアフリカ開発銀行の活動
脆弱国は依然としてアフリカの発展にとって大きな制約となっており、これらに対処することは当行にとって最優先課題です。アフリカ大陸における紛争や危機の大きさや固有の性質のために、脆弱国への支援はその脆弱性の根源に対処するものでなければなりません。同時に、脆弱性の地域的な側面を考慮に入れた支援を行う必要があります。
移行支援ファシリティ(TSF)は、アフリカ開発銀行グループ内で自律的に運営される組織として2008年に設立されました(当初は脆弱国ファシリティ(FSF)という名称)。 とりわけ、脆弱国のニーズや需要に比べて不足気味の傾向にあるリソースの「パフォーマンスを重視した配分(PBA)」の弱点に対処するために設立されました。以降、脆弱性が主な開発課題となっている低所得国のために、20億UA以上の追加的開発資金を提供してきました。
これは脆弱国が平和を確固なものとし、レジリエントな(回復力のある)制度を構築し、経済を安定させ、インクルーシブな(包摂的な)成長の基盤を築くのに役立つように設計された、迅速でシンプルかつ柔軟な資金提供実施メカニズムです。以下3つの柱を通じて支援を提供します。(i)国家建設の取り組みにおいて国家を支援するための、国、地域及び民間部門の活動向けの補足的リソース(第1の柱)、(ii)国際社会との関係正常化及び債務救済へのアクセスを可能にするための延滞債務解消(第2の柱)、(iii)従来型のプロジェクトや手法では適切に対処できない重要な能力開発への支援及び技術支援(第3の柱)。
これまでTSF資金の大部分はアフリカ開発基金(ADF)が提供してきましたが、TSFの3つの柱にいつでも直接貢献できる、または特定国、特定セクターあるいは特定の活動やプロジェクトを指定して割り当てることが可能な、ドナーまたはサードパーティからの追加的資金及び自発的拠出からの貢献が増加しています。
当行グループ内の特別目的事業体として、TSFはアフリカ地域におけるオペレーションや民間セクター・オペレーション等の、当行の他の手法や基金を補完し、活用できるように設計されています。TSFは法的には別の事業体として、当行の支援モダリティに更なる柔軟性をもたらす可能性があり、また、脆弱国に資金を動員するために当行が推奨する手段でもあります。
また、当行は2021年に、アフリカにおける脆弱性への対処およびレジリエンスを築くための戦略文書「Strategy for Addressing Fragility and Building Resilience in Africa (2022-2026)」を発表しました。同文書に基づき、(i)アフリカ域内におけるガバナンスや透明性、説明責任の向上、(ii)社会や安全保障、地域的な安定性の強化、(iii)コミュニティが経済的な機会により多くアクセスすることができるようになることを目指して当行のオペレーションを進めていく予定です。
加えて、当行は、Africa Resilience Forumの開催やAswan Forum for Sustainable Peace and Development(持続可能な平和と開発に関するアスワン・フォーラム)への協力を通じて、アフリカの脆弱国向け支援に関連する国際的な議論をリードしています。当行の第2回Aswan Forumへの関与についてはこちらの記事をご参照ください。