アフリカ開発銀行の5つの最優先分野
High 5s(ハイ・ファイブズ)について
アキンウミ・アデシナ
総裁(2015年9月~)
2015年9月、新たにアフリカ開発銀行総裁に就任したアキンウミ・アデシナは就任演説の中で、アフリカ開発銀行グループが現在掲げている10ヵ年戦略に立脚した新たな方針を打ち出しました。その方針とは、①アフリカの電化②食料増産③工業化④地域統合⑤生活の質の向上、の5つの分野をアフリカ開発銀行が最優先に開発を進めていく分野とするもので、これを ”High 5s”(ハイ・ファイブズ)と呼びます。これらの分野は、アフリカの人々の生活に変化をもたらし、ひいては国連が策定した持続可能な開発目標(SDGs)の達成にもつながるという点で、極めて重要な分野です。
アフリカ開発銀行は2013年に、2022年までの10ヵ年戦略を採択しました。その戦略の中で、変革を支援するための2つの目標として「インクルーシブな成長」と「グリーン成長への段階的移行」を、それを実現するための5つの事業実施上の優先事項として「インフラ開発」「地域的統合」「民間セクターの開発」「統治と説明責任」「スキルとテクノロジー」を、そして3つの特別重点分野として「脆弱国」「農業と食料安全保障」「ジェンダー」を定めました。High 5sの5つの最優先分野は、10ヵ年戦略の中核分野であるだけなく、10ヵ年戦略策定後に採択された「持続可能な開発目標」やCOP21で定められた枠組みとも密接に関連しています。また、アフリカ連合が開発目標としているアジェンダ2063が重視する分野でもあります。
アフリカ諸国は過去10年間で継続的な成長を続けていますが、1億2000万人ものアフリカの人々が現在職に就いておらず、人口の42%の人々が貧困線以下の生活を余儀なくされており、南アフリカ統計局の調査では4人に1人が栄養不足に苦しんでいます。また、世界で最も格差が深刻な10ヵ国のうち6ヵ国をアフリカの国々が占めており、特に女性や若者の地位向上が課題となっています。
アフリカ諸国のインクルーシブな成長を促進するには、経済機会をより多くの人、国、地域に開かれたものにし、アフリカ諸国の雇用創出を手助けすることが必要です。また、グリーン成長への段階的移行を促すには、クリーンな再生可能エネルギー、気候変動対応型農業、持続可能性を考慮した水資源管理などへの投資を通じて、持続性の高い開発を目指していくことが求められます。
- アフリカの電化
- 食料増産
- 工業化
- 地域統合
- 生活の質向上
どのような分野か? | アフリカ開発銀行の目標 | |
---|---|---|
アフリカの開発を阻んでいるのは、アフリカで続くエネルギーへのアクセスの欠如です。アフリカの工業化には電化の推進が必要で、アフリカ開発銀行グループは、2025年までのアフリカ大陸における電力へのユニバーサルアクセスを迅速化するため、アフリカのエネルギーにおける新政策「ニューディール」に着手しました。 | 2025年までにオングリッド発電の増加による162GWの電力の新規確保 1億3千万件の新規オングリッド接続 7.5千万件の新規オフグリッド接続 | |
アフリカの人口が2050年に25億人、また2100年には40億人に増加すると見込まれる中、どのように食糧を確保するかは重要な課題です。その解決のために、農業の大規模転換を図り、アフリカが持つ農業の可能性を最大限に解き放たなくてはなりません。 | 新たに1億5千万人へ十分な食糧供給を行える規模の食糧増産 1億の人々を貧困状態から救う 1億9千万ヘクタールの農地の生産性を回復 | |
今後のアフリカ開発のためには、民間セクターの成長が重要です。民間セクターを後押しすることで、アフリカを工業化し、また世界市場で戦える高い競争力を育成することが出来ると考えています。 | 工業分野のGDPを2025年までに現在より2.3倍にする 35の経済特区支援 30の官民共同プロジェクトの立ち上げと強化 | |
アフリカが成長するためには、アフリカを統合しなければなりません。それはより統合されたインフラストラクチャー、特に港湾、鉄道、国境を超える高速道路の整備等です。私たちは、アフリカ自体を結びつけなければならないと共に、世界ともつながらなければなりません。 | 地域インフラの建設 アフリカ域内の貿易と投資の強化 人々の国境を越えた移動の促進 | |
アフリカの多くの国では、過去10年間の経済成長にもかかわらず、貧困と不平等が広く存在します。 保健、教育、衛生と安全な飲料水へのアクセスが不十分なため、インフラ整備や水・衛生保健分野での基礎サービスへのアクセス改善、人材育成等が必要です。この取り組みでは、若年層を含めた雇用創出に重点を置く必要があります。 | 8千万の雇用創出 必須スキルの習得 水・衛生的環境へのアクセス改善 医療制度の強化 |