「ミッション300エネルギー・サミット」:アフリカのエネルギーの未来の分岐点

ダルエスサラームで開催された「ミッション300 アフリカ・エネルギー・サミット」は、アフリカ大陸のエネルギー危機への取り組み方に大きなターニングポイントとなりました。これまでは、各国が断片的にエネルギー危機に取り組んでいましたが、財務面・政治面に支えられたアフリカ大陸全体の戦略へと足並みを揃え始めています。

同サミットによって、普遍的な電力アクセスの達成に向けた今後の課題と機会が明確になりました。エチオピアのアムデ大統領は、「54%という電力アクセス率を達成したにもかかわらず、未だ6,000万人という驚くべき数の国民が電気を利用できていない。」と述べました。エチオピアは2028年までに普遍的な電力アクセスを達成するという積極的な目標を掲げており、実現には毎年340万世帯の電化が必要となります。ベナンのタラタ副大統領は、「2016年以降、ベナンは(ガーナとナイジェリアへの)依存から脱却するため、電力の自給に取り組んできた。今日、我々はエネルギーの50%を自国で生産している。」と述べました。ベナンは、太陽光、火力、水力発電を組み合わせており、投資家のための環境整備を実施しています。ガーナのマハマ大統領は、「ラストワンマイルを正しく設定し、ガバナンスを確立することが重要。特にそれが国営企業であるなら、尚更だ。」と、実施の重要性を説きました。

民間セクターからの参加者は、特に送配電における大胆な改革の必要性を提言しました。IFCのマネージング・ディレクターであるディオップ氏は、「民間セクターはアフリカのエネルギー部門にはまだそれほど融資できていない。送電網のファイナンスに民間セクターを巻き込むことが重要。」と述べました。トタルエナジーズ社のプヤンヌCEOは、「再生可能エネルギーの発電所を建設しても、その後の送電に問題がある。」とインフラ面の阻害要因を強調しました。また、アフリカ20カ国で事業を展開するAMEA Power社のアルノワイス会長は、デベロッパーに対し配電網への投資を呼びかける一方、通貨兌換の重要性と合理化された管理プロセスの重要性を強調しました。

世界銀行とアフリカ開発銀行が共同で480億ドルを拠出することは、単なる資金援助の枠を超えて、他のステークホルダーから追加資金を取り込むことにもつながります。世界銀行のバンガ総裁は、「政府、民間企業、慈善団体、開発銀行が単独で達成することはできないが、全員が力を合わせれば成し得る。」と強調しました。民間投資を活性化させるため、IFCは、アフリカで分散型再生可能エネルギーとオフグリッド太陽光ソリューションに取り組む企業を対象に、新たに10億ドルのファンドを設立すると発表しました。また、民間のリーダーは、政府保証と現地通貨建ファイナンスの必要性も強調しました。ナイジェリア・ソブリン投資機構(Nigeria Sovereign Investment Authority)のウマル-サディクCEOは、「資本構成は不可欠であり、現地通貨建で資本(エクイティ)を集めることが重要。」と述べました。

同サミットでは、援助国と被援助国の力関係にも変化が見られました。発表されたパートナーシップは、従来の援助関係というよりも、より協力的なアプローチを反映しています。フランスのマクロン大統領はビデオメッセージを通じ、フランスによる10億ユーロの投資を約束したほか、フランスは、民間セクターによる再エネへの投資を促進するマルチドナー信託基金である「アフリカの持続可能エネルギー基金(SEFA)」に1,000万ユーロを拠出することを約束しました。SEFAに対しては、デンマーク、イギリス、スペインもまた、既存の拠出金をそれぞれ1,340万ユーロ、1,013万ユーロ、300万ユーロ増額しています。

アフリカ開発銀行グループのアデシナ総裁は、「アフリカで電力にアクセスできる人口の割合は、2015年の39%から2024年には52%へと大幅に増加した。しかし、5億7,100万人が未だ電力なしで生活しており、世界の未電化人口の83%を占めている。我々は、この数字をさらに減少させるために断固とした行動を取らなければならない。」と強調しました。ダルエスサラーム宣言は、政府による公共事業の管理と調達の透明性を改善させるとともに、民間を支援する規定とイノベーティブな融資を通じて民間セクターの参加を促すことで、上記の課題に直接的に取り組んでいます。開発パートナーは、譲許的な資金と技術支援を増やし、ダルエスサラーム宣言の実施を加速させることを約束しています。ザンビアのヒチレマ大統領は、「(アフリカ諸国は)このアジェンダの達成を容易にするビジネス環境を提供する用意がある。」と述べました。

ダルエスサラーム宣言は、2025年2月に開催されるアフリカ連合首脳会議において、アフリカ全土での採択を目指して発表される予定です。同時に、ミッション300 アフリカ・エネルギー・サミットで「エネルギー・コンパクト」を発表したチャド、コートジボワール、コンゴ民主共和国、リベリア、マダガスカル、マラウイ、モーリタニア、ニジェール、ナイジェリア、セネガル、タンザニア、ザンビアの12カ国は、テストケースとして改革の実施を開始します。

また、アフリカ諸国はクリーン・クッキングについても大きな一歩を踏み出しました。アフリカ大陸では毎年約60万人の女性と子どもが死亡し、年間8,000億ドル近い健康・経済コストが発生しています。これらの危機に対処するための公約も「エネルギー・コンパクト」に盛り込まれています。同サミットでは、調理した分だけ支払うLPG従量課金モデルや、効率的なバイオマス・コンロなど、革新的なソリューションが紹介されました。同サミットのホスト国であるタンザニアは、2034年までにクリーン・クッキングの導入を80%まで高めるという国家戦略を強調しました。タンザニアのハッサン大統領は、「このサミットはエネルギー・アクセスの枠を超え、家族に力を与え、何百万人もの人々を貧困から救い、若者に希望と機会を与えている。」と強調しました。この新しい取り組みが成果をもたらすかどうか、今後12〜18カ月が極めて重要になります。

プレスリリース原文こちら(英語)

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