エチオピア:日本の支援で進む再生型農業プロジェクトを現地で確認
2026/8/10

エチオピア南西部のジンマ県で、日本の支援を受けた再生型農業プロジェクトが進められています。アフリカ開発銀行グループと日本の協力のもとで実施されているこの取り組みは、農業生産性の向上、土壌の回復、気候変動への対応を同時に実現することを目指しており、実証ほ場では収量の大幅な向上など有望な成果が確認されています。
本プロジェクトは、アフリカ開発銀行グループが管理する日本政府拠出の二国間信託基金「政策・人材育成基金(Policy and Human Resource Development Grant: PHRDG)」の支援を受けて実施されています。1994年に設立されたPHRDGは、アフリカ開発銀行グループにおいて最も長い歴史を持つ二国間信託基金です。日本はこれまでに5,000万ドル以上を同基金に拠出し、農業・食料安全保障、気候変動対策、人材育成、知見共有などの分野でアフリカ各国の取り組みを後押ししています。
今回の「アフリカにおける気候変動対応のためのエビデンスベース環境再生型農業」プロジェクトは、アフリカ開発銀行グループと日本の協力を、資金支援や政策対話だけでなく、農業現場での実践的なイノベーションへと発展させる取り組みです。ササカワ・アフリカ財団が実施し、農家研修や気候変動に強い作物品種の導入、土壌改良技術の普及、日本発のデジタル農業技術の活用を組み合わせて進められています。
ジンマ県セカ・チェコルサ郡の実証ほ場では、改良品種のトウモロコシや小麦に加え、石灰施用、ミミズ堆肥、バイオ炭肥料、省耕起栽培などの再生型農業技術を導入しています。初期データでは、小麦の収量が1ヘクタール当たり1,293キログラムから2,443.7キログラムへ約89%増加し、トウモロコシの収量も1,222キログラムから4,541.8キログラムへ約272%増加しました。プロジェクトはこれまでにエチオピア国内で9万1,000人以上の農家に届けられており、そのうち約3万人が女性です。
6月には、アフリカ開発銀行グループの中井智己理事をはじめ、農業・アグロインダストリー局のイノセント・ムサビマナ氏、資源動員・パートナーシップ局のローザ・ルーゴス氏らが現地を訪問しました。ササカワ・アフリカ財団エチオピア事務所が地方政府やジンマ大学と連携して実施した今回の視察では、農家や農業普及員、研究者らと意見交換が行われたほか、実証ほ場や温室効果ガス排出量の測定現場、ミミズ堆肥センター、苗木育成施設、シャシェメネ農業研修センター、ジンマ大学農学部のバイオ炭製造施設などを訪問し、プロジェクトの進捗状況を確認しました。

本事業は、国際熱帯農業研究所(IITA)およびGreein株式会社との連携のもと実施されています。ササカワ・アフリカ財団による農家研修と持続可能な農業の知見、アフリカ開発銀行グループの「アフリカ農業変革技術(TAAT)」プログラムを通じて開発された気候変動耐性品種、そしてソフトバンクグループ発で現在Greein株式会社が展開するAI活用型デジタル農業ソリューション「e-kakashi」を組み合わせ、持続可能で生産性の高い農業の実現を目指しています。
e-kakashiは、環境データやほ場データを収集・分析し、農家や農業普及員による栽培管理の意思決定を支援するシステムです。ジンマの実証ほ場では、導入している農法が温室効果ガス排出量や土壌炭素量、生育環境にどのような影響を与えるかについても分析が行われています。こうしたデータは、排出量の削減、土壌への炭素貯留の促進、生産性の向上に加え、水や肥料、労働力をより効率的に活用できる技術の特定に役立てられます。
中井理事は、「PHRDGを通じた日本の支援は、イノベーションによってアフリカ農業が直面する課題の解決に貢献できることを示しています。このプロジェクトの価値は、現在の成果だけでなく、農家主導の取り組みを通じて食料安全保障の強化や強靱な農業バリューチェーンの構築につながる学びと可能性を提供している点にあります」と述べました。
また、ムサビマナ氏は、「このプロジェクトにより、私たちは推測ではなくエビデンスに基づいて判断できるようになります。収量や土壌状態、排出量などを実際に測定することで、どの技術が最も効果的であり、普及のために農家が何を必要としているのかをより正確に理解できるようになります」と説明しました。
対象地域では、土壌の酸性化や地力の低下、生産性の停滞、改良された栽培技術の普及不足に加え、干ばつや洪水、病害虫被害といった課題が存在します。プロジェクトでは、省耕起栽培、石灰施用、ミミズ堆肥、バイオ炭肥料、Bio-Boost接種剤、改良種子、収穫後技術、デジタル普及ツールなどを組み合わせた包括的な支援を行っています。
この取り組みは、エチオピアに加え、ナイジェリア、ベナン、ガーナ、ウガンダで実施されているPHRDG支援事業の一環でもあります。各国で気候変動に対応した農法に関するエビデンスを蓄積し、農家へのインセンティブの検証や教訓の共有を進めるとともに、気候変動に適応した栄養価の高い作物品種の普及拡大を後押ししています。
今回のジンマ訪問は、日本の信託基金による支援が、農業現場での実践的なイノベーションへとつながっていることを示す機会となりました。日本発のデジタル技術と科学的エビデンス、現地の農業普及システム、農家研修を組み合わせたこの取り組みは、小規模農家の生産性向上や土壌の健全化、さらには気候変動に強い農業システムの構築に向けたモデルとして期待されています。
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