2021年版アフリカ経済見通しの発表:COVID-19の制約と債務負担にもかかわらず、アフリカの成長は上向きの見通し

 

要点

・パンデミックの経済的影響は経済的特徴や地域によって異なるものの、広範囲での回復が見込まれます。

・アフリカの平均債務比率(対GDP比)は、短期、中期的に10~15パーセントポイント上昇する見込みです。

・アキンウミ・アデシナ・アフリカ開発銀行総裁は、「アフリカのためにあと一歩の債務救済を行う時は今です」と述べています。

 

アフリカ開発銀行が3月12日に公表した「アフリカ経済見通し2021年版(AEO: African Economic Outlook 2021)」は、世界的なパンデミックと外因性の経済ショックという困難な背景にもかかわらず、アフリカは過去50年で最悪の不況から回復し、2021年に3.4%の経済成長を達成すると報告しています。

2019年12月の新型コロナウイルスの発生により、アフリカは甚大な被害を受けており、観光依存国、石油輸出国、その他の資源集約国が最もその影響を受け、格差が広がっています。

2003年以降、毎年発行されているAEOは、アフリカの経済状況及び見通しに関する主要な数値を提示しています。AEO 2021は「債務問題の解決から成長へ:アフリカの進む道(From Debt Resolution to Growth: The Road Ahead for Africa)」をテーマに、COVID-19の影響と政府債務に焦点をあてて、各国政府と政策立案者にそれらの影響の緩和策を提案しています。

AEO 2021によれば、アフリカ大陸全体の経済成長率は2020年にマイナス2.1%となった後、2021年には回復が見込まれているものの、その回復は貧困拡大の脅威を取り去るものではありません。パンデミックの影響により、2020年には約3,000万人が極度の貧困に追い込まれ、今年は推定3,900万人のアフリカの人々が極度の貧困に陥る可能性があります。教育水準が低く、資産が少なく、インフォーマル・セクターに従事する人々が最も影響を受けており、保護される必要があることをAEOは指摘しています。

AEO 2021の公表に合わせて行われたウェビナーにおいて、アフリカ開発銀行のラバー・アレズキ・チーフ・エコノミスト兼副総裁は、アフリカで予測される成長は、外的要因と内的要因の両方から生じる大きな下振れリスクに左右される可能性があり、「何も対策を講じないことの代償は大きくなるだろう」と危険を指摘しました。

 

債務について

2020年、各国がパンデミックの中で国民を支援しようと努めたことにより、アフリカ大陸全体での政府支出が急増しました。

政府支出の急増は、財政収支と債務負担に直接的な悪影響を及ぼしました。アフリカの平均債務比率(対GDP比)は、COVID-19の影響による歳出の急増と歳入の縮小により、短期、中期的に10-15パーセントポイント上昇すると予測されます。その結果、短期、中期的に急速に債務残高が増加するでしょう。AEOによると、平均債務比率(対GDP比)は、GDPの約60%で安定していましたが、アフリカで現在行われている債務再編は、情報の非対称性、債権者調整の問題、複雑な借入手法の利用のため、よりコストと時間がかかるものとなっています。

 

アフリカ開発銀行のCOVIDO-19への対応

アフリカ開発銀行は、パンデミックによる保健及び経済への影響を緩和策を講じている各国を支援するために、危機対応のための融資枠を設置することにより、COVIDO-19のパンデミックに迅速に対応しています、当行は、国際資本市場において30億米ドルの「新型コロナウィルス感染症(COVID-19)と戦うソーシャル・ボンド」を起債しました。これは起債時には米ドル建てのソーシャルボンドとして過去最大の規模でした。

しかしながら、アフリカの債務負担のファンダメンタルズを最重要視し、無視してはならないとアデシナ総裁は述べています。

「アフリカ開発銀行は、短期的に重要な政策上の懸念となりうるトピックについて議論するために、戦略的で前向きな選択をしました」とアデシナ総裁はAEOの序文に記しています。

「国際社会と協力し、アフリカの債務と開発金融が抱える課題に取り組む必要があります。はるかに多くの財政的支援が必要であり、民間の債権者も解決の一部を担う必要があります。アフリカのためにあと一歩の債務救済を行う時は今です。」

AEOは、パンデミックに対応するための多面的な政策アプローチに向けた重要な提言を行っています。提言には、ウイルスなどの予防可能な病気に対処するための保健医療体制支援、景気回復を支えるための金融・財政支援、社会的セーフティネットの拡大やより平等な成長支援に加え、学校の再開によりパンデミックが人的資本の蓄積に及ぼす長期的な影響を最小限に抑えること、デジタル化・工業化・経済多様化により生じる将来の仕事に向けて労働力を再編成するための活発な労働市場政策の拡大が含まれています。

アフリカ開発銀行のハナン・モルシー・マクロ経済政策・予測・研究局長は「より良く、より公平で、より持続可能で、その結果、より強靭なものを構築することができる、100年に一度の機会です。この機会を生かすためには、迅速で大胆な対策が必要です。AEOには、そのために求められる行動が明確に述べられています」と述べています。

2001年にノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツ教授は、このウェビナーの冒頭で、アデシナ総裁と一対一で会話を交わしました。両氏の対談に続き、パネルディスカッションではAEOについての多岐にわたる議論が展開されました。

 

アフリカ経済見通し2021の全文及び要約紹介のビデオは、こちらをご参照ください。

また当日のウェブナーの様子はこちらからご覧いただけます。

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