2023年アフリカ投資フォーラム (AIF 2023) : アデシナ総裁が日本とアフリカの連携及び日本企業からの投資を歓迎

(AfDBディレクターのワレ・ショニバレ氏(右)とアフリカでのビジネス機会を模索する日本のエネルギースタートアップやファンド代表等)

11 月9日、アフリカ開発銀行(AfDB)のアキンウミ・アデシナ総裁は、モロッコのマラケシュで開催されたアフリカ投資フォーラム2023 (AIF 2023) におけるサイド・イベント「ジャパン・スペシャル・ルーム」(日本とともにアフリカの成長を加速:スタートアップから大企業まで(Boosting Africa’s growth with Japan: From Start-ups to Major Companies)にて、日本企業はアフリカの経済的潜在力から利益を得ていると述べ、アフリカの持続可能な包摂的成長を促進するために連携と投資拡大を呼びかけました。

アデシナ総裁は、「建設機械のトップ企業であるコマツは、2020年にアフリカで10億ドルの収益を上げている。三菱商事や日立製作所は、20世紀初頭からアフリカでエネルギーに投資してきた。これらの企業はアフリカを熟知しており、投資を続けている。」と述べました。

本セッションには、アフリカでのビジネス機会を模索しているスタートアップ、投資ファンド、大企業や機関等の40社の日本企業、80名以上が参加しました。AfDBの日本、ブラジル、アルゼンチン、オーストリア及びサウジアラビア担当の野元隆章日本代表理事が登壇しました。

アデシナ総裁は、「強固な官民連携を通じて、アフリカへの日本の投資はより速く成長するだろう。アフリカはその巨大な潜在力を活用するために、より多くのベンチャーキャピタルやプライベートエクイティファンドを必要としている。そして、日本もアフリカに注目している。新世代の日本のベンチャーキャピタルファンドがアフリカの中小規模のスタートアップに注目するようになった。」と述べました。

アフリカでビジネスを展開している日本企業の数は、2010年の520社から2020年に900社まで増加しました。

ヘルスケア向けドローンと肥料用の低炭素アンモニア

日本からの参加企業のCEOや代表者等は、投資ファンドやヘルスケア、エネルギー、インフラ関連ビジネスについてプレゼンテーションを行いました。

経済同友会幹事及びグローバルサウス・アフリカ委員会委員長の&Capitalの代表取締役社長CEOの渋澤健氏は、アフリカに焦点をあてた新しいインパクトファンドである&Capitalは、この半年で90社を訪問したと述べました。昨年アビジャンで開催された2022年アフリカ投資フォーラム(AIF2022)にて、経済同友会とAfDBは、協力趣意書(SOI)に署名しました。

渋澤氏は、アフリカの発展と日本の工業化との類似点を挙げ、150年前の日本は発展途上国であり、この日本の発展を参考にしつつ、日本とアフリカは明るい未来を共創していくべきだと述べました。

アフリカでの事業投資やアフリカで活躍する他企業へのコンサルティングサービスを行っているAAICの代表パートナー/CEOの椿進氏は、ルワンダで約350人の現地従業員を雇用する200ヘクタールのマカダミアナッツ農園及び加工事業であるスマート・ビレッジ・プロジェクトへの投資について説明しました。また、同社のファイナンスにより、タンザニアの 1,760 ヘクタールのプランテーションに住む 1,000 人の農民の生活水準が向上し、電力、無線インターネット、飲料水、ヘルスケア等のインフラがコミュニティに提供した事例を紹介しました。

Connect Afya CEOの嶋田 庸一氏は、民間病院や診療所と提携し、ケニアで癌、HIV、Covid-19の医療機器や検査ラボを提供している旨を紹介し、アフリカでは診断が遅いがゆえに癌患者の生存率が低い旨述べました。

SORA Technologyの取締役の梅田昌季氏は、滞留水中の蚊の幼虫をターゲットにしてマラリアの制御を目的としたドローンや AI ベースのソリューションを活用した事業について紹介しました。また、コレラ対策や医薬品の効率的なサプライチェーン等の他分野へのドローンベースのソリューション事業の展開も検討している旨述べました。

エネルギー企業のKENS.COは、ブルキナファソ、ブルンジ、コンゴ民主共和国や他アフリカでの投資事業について紹介し、国際マーケティング・事業開発マネージャーのアブ・ザヘド・アザド氏は、家で子供たちが宿題をするために使えるソーラーLEDランプを提供している旨説明しました。学校でのみ充電可のソーラーLEDランプは、ベナンとブルキナファソの学校の出席率と試験合格率の向上に役立っていると述べました。

ツバメBHBのアフリカ・マーケティングマネージャーの須田裕美氏は、東京工業大学が開発した肥料やその他の用途に活用される低温低圧でアンモニアを生成する同社の最先端の技術について説明し、アフリカ各国で再生可能エネルギーを利用してグリーンアンモニアと低炭素肥料を生産・販売する特別目的会社(SPC)を設立するパートナー企業を探していると述べました。

投資ファンドのUNCOVERED FUNDのCEOの寺久保拓摩氏は、アフリカ企業29社をポートフォリオに擁する同社は4億5,430万ドルを調達し、同社の投資によりこれまでに3,300人の雇用を生み出していると述べ、今後は、1,000社のポートフォリオと1億人の雇用創出を目標としている旨述べました。また、寺久保氏は「我々は新しいファンド設立に向け動いでおり、新たなパートナーとしてマネックス証券が加わる」と説明し、新ファンドはオープンイノベーションを通じて経済成長をもたらすと述べました。また、「我々は日本の技術と資産を使って、アフリカのスタートアップの成長を支援している」と述べ、新ファンドはアフリカのスタートアップがカーボンニュートラルなクレジットを世界中で発行できるよう支援し、日本企業とアフリカのスタートアップとの取引をサポートする旨、金融包摂、流通、モビリティインフラ、農業及びエネルギーに焦点を当てる予定である旨説明しました。

AfDBの農業・人間・社会開発担当副総裁のベス・ダンフォード氏は、「本日私が聞いたのは情熱とビジョン、つまり成功するために本当に必要な2つのものであり、非常に革新的な技術、最先端の技術によって支えられています。ここまでのアフリカでの深い経験があるとは思っていませんでした。皆さんはアフリカで何年も、または何十年も経験を積んできています。これら 4つのが揃って本当に成功を収めることができる」と述べました。

国際協力銀行(JBIC)パリ駐在事務所主席駐在員の辰巳智則氏は、スタートアップや中小企業がアフリカでビジネスを実施できるように育成した椿氏や寺久保氏の努力を賞賛し、「アフリカビジネスの成長段階に焦点をあてた新しいファンドを設立するという渋澤氏の努力のおかげで、ファンドの準備が整った今、我々銀行セクターとしてファンドと協業できる方法を検討する時期に来ている。 一つのアプローチとしては、ファンドが特定のプロジェクトに長期シニアローンを提供する銀行にメザニンを提供することだろう。もう一つは、日本の投資家にアフリカ企業を買収するための合併と買収 (M&A) の融資を提供することである」と述べました。

AfDBのエネルギー金融ソリューション・政策・規制担当ディレクターのワレ・ショニバレ氏は、「日本とアフリカの関り方が変わってきていることを実感している。1970年代以降の日本のビジネスパーソンはアフリカにきて自社製品を販売するだけだったが、昨今の日本は異なるアプローチを取っている。アフリカと連携し、イノベーションを促進し、現地で解決策を共創している。この長期的戦略は、持続可能であるだけでなく、日本とアフリカにとって相互に有益であると信じている」と述べました。

また、民間セクター・インフラ・工業化担当副総裁のソロモン・クエノー氏は、「日本企業がもたらすものは、ガバナンスと技術力である。住友商事は、我々が一緒に仕事をしたいと思うような企業です。非常に困難な時期に、前向きにプロジェクトを支援してくれました。民間セクターのプロジェクトに投融資を行う我々にとって、このようなパートナーを望みます」と述べました。また、スタートアップを支援する日本の連携との相乗効果についても言及し、「&Capitalとの連携は、初期段階の企業に真の関心が寄せられていることを実感したからである。従い、我々はより早い段階からリスクを負うことも厭わない」と述べました。&Capitalは2023年1月に設立され、日本からアフリカのスタートアップに資金提供を行うインパクト投資ファンドです。

アフリカと日本が投資エコシステムを共創するアイデアは、2022年8月に開催された第8回アフリカ開発会議(TICAD8)で始まりました。TICAD8にてアデシナ総裁は、アフリカにおける日本の投資と事業を拡大する必要性を強調し、また、2023年4月に日本を訪問した際は、アフリカでのビジネスチャンスについて、政府関係者、ビジネスリーダー、起業家及び投資家等と意見交換を行いました。

また、野元隆章日本代表理事は、「私はアフリカの成長を楽観視している一人です。社会問題に対するアフリカの人々のパワーとオーナーシップは、1868年の明治維新後に近代化を目指した時、そして第二次世界大戦後に急成長を遂げた時の日本人のそれと非常によく似ている」と述べました。

ジャパン・スペシャル・ルームでは、日本の大企業からスタートアップまで多様な企業の代表者がプレゼンテーションを行いました。スタートアップからは、AA Health DynamicsのCEO/創業者の原健太氏、SpikerのCEO/共同創業者の笠井綾子氏、SOIK のCEOの古田国之氏、WASSHAのCEOの秋田智司氏、SUCRECUBE Japonの創業者/CEO の佐藤弘一氏及びアフリカ責任者兼共同創業者 リナ・ロバート氏、Steinmüller Engineering GmbHの技術協力マネージャーの廣瀬 拓哉氏、 Index Strategy の取締役兼執行役員の池戸 あいり氏が参加しました。また、アフリカ住友商事の社長・理事・アフリカ支配人の齊田忠勇氏、丸紅のアフリカ総括兼ヨハネスブルク支店長の山本雄祐氏等が参加しました。

ジャパン・スペシャル・ルームは、AfDBのコミュニケーション・渉外担当ディレクターのソロモン・ムゲラ氏と、アジア代表事務所次席の木下直茂氏が司会進行しました。

11月8日~10日の日程で開催されたAIFには、アフリカ政府の首脳、投資家、スポンサー、開発金融機関等が参加し、数十億ドル規模の農業ビジネス、運輸、エネルギー、その他重要セクターの案件を投資家に紹介するボードルームセッションが行われました。

 

AIFの詳細については、こちら をご参照ください。

プログラム、資料(公開可の資料のみ掲載)、ビデオはこちら をご参照ください。

プレスリリース原文(英語)はこちら

 

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