アフリカ開発銀行(AfDB)の長期戦略2013-2022

アフリカ開発銀行の長期戦略2013-2022(日本語English)にはアフリカ大陸全体の野心的な希望が反映されています。そしてこの戦略は、アフリカの過去10年間の進展と今後10年間の目標についての理解と経験とにしっかり根ざしたものとなっています。

アフリカは経済の変革プロセスに着手しました。このプロセスにより過去10年間にわたる堅実で持続的な成長が実現しましたが、それは不均一かつ強固な基盤を欠くものであり、どのように評価しても完全とは言えないものです。

この長期戦略は、AfDBをアフリカにおける変革の中心に据え、アフリカの成長の質を高めることを狙ったものです。そして、成長が一部の民や国だけでなく、アフリカのすべての民と国のために共有されることを確かなものとすることで、変革のプロセスを拡大し、深化させることを目的としています。長期戦略はまた、環境面で持続可能であるのみならず、経済的なエンパワーメントに繋がる成長を実現することを目指しています。成長が「グリーン」であると同時に「インクルーシブ」であれば、大陸が現在必要としている雇用が創出されるようになり、それにふさわしいエネルギーと希望を持った何百万もの若者が次々と労働市場に参加するなかで、アフリカではこれまでに無い規模の雇用が必要とされるようになるでしょう。

このため、AfDBのビジョンはアフリカのビジョンであり、その未来はアフリカの未来であると言えるのです。当行が収めた多くの成功は、当行の活動の対象であるアフリカ大陸の成功を映し出しています。一方で、達成できていない部分があるという事実は、当行の域内加盟国全般に行き渡る真の転換が妨げられていることを示しています。地域的に統合され経済的に多様なアフリカという目標は、老若男女、地域か都市かの分け隔てなくすべてを包括すると同時に、環境への配慮を強めることを決意しながら、アフリカを次なる世界の新興市場として確立するものです。AfDBはアフリカの開発を代弁し、その発展のために選ばれたアフリカのパートナーとなるでしょう。

この長期戦略は2つの目標を柱に構成されており、5つの事業運営上の優先事項を基盤としています。これら優先事項において、当行は比類の無い優位性、経験、アクセス、そして信頼を有していると言えます。


2つの目標

この向こう10年間の長期戦略は、アフリカの成長の質を高めるための2つの目標に重点を置いています。それは、インクルーシブな成長とグリーン成長への移行です。


インクルーシブな成長

第一の、そして包括的な目標は、よりインクルーシブで、処遇や機会の平等のみならず貧困の本格的削減とそれに対応する雇用の大幅増加に繋がるような成長を達成することです。

インクルーシブな成長はアフリカ大陸の多大なポテンシャルを引き出し、人口ボーナスの恩恵を受けるチャンスを高めるものであり、年齢やジェンダー、地理的な障害を越えて経済基盤を広げることによりアフリカに繁栄をもたらすでしょう。

当行は、ジェンダーの平等とコミュニティの参加を擁護すると同時に、民間部門のポテンシャルを解き放つインフラへの投資を行っていきます。そして競争力に繋がるスキルの向上を支援し、そうしたスキルが地域の雇用市場における機会と需要に見合うものであることを確かなものとしていきます。


グリーン成長

第二の目標は、インクルーシブな成長が持続可能であることを確かにすることです。その実現に向け、人々の暮らしを守り、水、エネルギー、そして食の安全を高め、天然資源の持続可能な利用を促し、技術革新と雇用創出、経済的発展を後押しする「グリーン成長」へとアフリカが徐々に移行するよう支援していきます。

当行は、環境、社会、経済面でのリスクをより適切に管理しながら、自然環境への負担を軽減するような開発への道を模索することにより、グリーン成長を支えていく所存です。

グリーン成長に至るための優先課題としては、気候変動に対する耐久性を高め、持続可能なインフラを提供することのほか、生態系サービスを育み、天然資源(特に、成長には必要不可欠なものながら、気候変動に最も影響される資源である水)を効率的かつ持続的に利用することなどが挙げられます。


5つの事業運営上の優先事項

この長期戦略では、当行がその責務を果たしアフリカの成長の質を高めるための5つの主要な柱が概説されています。これらは最初、2007年のハイレベル有識者委員会の見直しにより提唱され、その後「中期戦略2008-2012」に盛り込まれたものですが、当行が最大の相対的優位性、そして過去の実績を有している分野のものです。過去10年間にわたり、当行および他の機関による調査では、当行の事業運営について説得力ある一貫した枠組みを提供するのはこれらの柱であることが繰り返し確認されています。

2011年に行われた中期戦略の見直しでは、これらの優先事項に注力することは当行のクライアントにとって有益であるものの、3ヵ年のローリング行動計画に基づくより長期的な計画の展望と戦略が必要であることが指摘されました。


インフラ開発

アフリカ大陸は依然として膨大なインフラ整備のニーズを抱えています。アフリカにおけるインフラ投資の規模は対GDP比で僅か4%と、非常に低水準に留まっています(中国は同14%)。インフラギャップを解消することでアフリカのGDPは年に2%ポイント押し上げられると推定されています。

AfDBはアフリカのインフラ開発に大きく貢献しており、当行が行った輸送、エネルギー、水道への投資により、何千万人もの住民の生活が改善されました。当行は、貸付のみならず、当行の金融資産にレバレッジを掛けることにより、アフリカ大陸へのインフラ融資を大幅に拡大する予定です。


地域的経済統合

アフリカがその成長ポテンシャルを完全に引き出し、グローバル経済に参画し、関連を深めるグローバル市場のメリットを共有するためには、地域統合が不可欠です。54の独立国が存在するアフリカで、それぞれが連携して行動できるような物理的、経済的な仕組みのないことが、統合の可能性にとって深刻な制約となっています。当行は、さらに大きくより魅力的な市場を生み出し、脆弱国家を含む内陸国を国際市場に結び付け、アフリカ域内貿易を支援するための経済的統合を促進する上で、主導的役割を果たすにふさわしい立場にあります。


民間セクター開発

アフリカにおける富のダイナミクスおよび雇用の創出、そして政府の任務の多くは、公的資金ではなく民間資本の主導で実現するようになってきています。AfDBは各国政府と直接的、間接的に協力することにより、今後も引き続きアフリカの民間投資を促進し、それにより積極的に関与するパートナーとなっていきます。

当行は、融資を行い助言や技術支援を提供しながら、民間セクターの特殊なニーズや機会、課題に対応できるような活動を計画していきます。
そして、アフリカの起業家に焦点を置き、女性の起業家や若い起業家が直面する制約に対応し、零細、中小企業を支援します。金融セクターの強化を図るなかで、当行は零細、中小企業への貸付を活性化し、地元の資本市場の発展を支援すると同時に、金融機関のガバナンスおよびリスク管理の改善や、金融に関する基準および規制の採用、実施を促進していきます 。


ガバナンスとアカウンタビリティ

経済成長は、能力を備えた国家によって運営される公正、透明で効率の良いガバナンスと機関という強固な基盤の上でしか実現しません。より良いガバナンスと基本的なサービスを求めるアフリカの需要に応えるため、当行は、例えば国会やメディア、市民団体の力を強めることにより、内包性を支援しアカウンタビリティを促す機関をサポートしていきます。そして、公共財政の運営を改善するため、AfDBは財政の分権化および国内資金の動員をより一層支援していきます。


スキルとテクノロジー

アフリカ全土に渡り失業率は容認できない水準にあり、特に若年層ではそれが顕著となっています。技術労働者の供給を増やすため、AfDBは労働市場における具体的なニーズに対応した技術訓練、就業訓練の支援を強化します。この目的は、小規模な事業を起こすスキルも含め、フォーマル、インフォーマル両セクターにふさわしいスキルを若年層に備えさせることです。


3つの特別重点分野

10年間にわたる長期計画を実施していくなかで、当行は、上記2つの目標に不可欠な要素として「脆弱国」、「農業と食糧安全保障」「ジェンダー」に特に注意を払っていきます。


脆弱国

脆弱国を支援することにより、アフリカ大陸の5分の1の人口を抱え、貧困層のかなりの割合を占めるこれらの国々の経済を強化することができます。脆弱性は突発的に発生すると同時に広がりやすいものでもあります。このため、多様なニーズに合わせた支援が必要とされるほか、対話、現地のオーナーシップ、成功の評価を軸とした連続的かつ地域的なアプローチが求められます。


農業と食料安全保障

統合化されたバリューチェーンのアプローチを通じ農業と食糧安全保障を強化することにより、アフリカ村落部の人々の暮らしを改善することができます。それら人々の多くは農業に生計を依存しており、かなりの部分が不安定な気候に慢性的に脆弱な状態にあります。アフリカは自給自足の経済であり、人口の70%以上が農業に従事していますが、自らのニーズを満たせないことがあまりに多いのです。村落部のインフラ(村落部における道路、灌漑、電気、貯蔵施設、市場へのアクセス、自然保護のシステム、供給ネットワークなど)への投資を継続することにより、AfDBはアフリカ諸国の農業の生産性と競争力を高める支援をしていきます。

さらに、地域のインフラ整備に投資し、食料及び肥料などの投入物の輸入に対する貿易障壁を取り除くための政策対話を進めることにより、食料価格の変動を抑制し食料不安の低減を支援していきます。


ジェンダー

女性及び少女の能力を高め、機会を広げることは、アフリカの人口の半分の生産性の向上、労働市場への参加の増進につながります。女性の知識、スキル開発、法律上の権利そして財産権を重視することは、女性の仕事の地位を向上させる基礎となります。女性と少女が担うアフリカ大陸の負担は半分を大きく超えるほどですが、同時に、所得を生む可能性という点でも彼女らは圧倒的に高いポテンシャルを備えています。

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