COP28:国際開発金融機関を通じたIMFの特別引出権チャネリングに対する国際的な支持高まる

● フランス、日本、スペイン及び英国の政府は、アフリカ及び中南米・カリブ諸国の資金を必要としている国々に対して、特別引出権(SDR)のチャネリングを利用したハイブリッド資本提供支援を表明。   

● 国際通貨基金は、アフリカ開発銀行と米州開発銀行が提案する国際開発金融機関を通じたSDRのチャネリングについて、準備資産としての要件を満たしている革新的な手法である旨確認し、SDRを活用したハイブリッド資本案を近日中に理事会に提案する旨を示唆。

 

※この日本語プレスリリースは、正文の英語版より和訳したものです。適宜、英語版をご参照ください。

 

フランス、日本、スペイン及び英国の政府は、国際通貨基金(IMF)、国連、アフリカ及び中南米諸国の閣僚、アジア開発銀行(ADB)、ブラジル(G20次期 議長国)、その他国際機関とともに、アフリカ開発銀行(AfDB)と米州開発銀行(IDB)が提案する国際開発金融機関 (MDBs)を通じた特別引出権(SDR)のチャネリングに対して支援することを表明しました。

12月4日にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催中の国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)にて気候変動対策としてSDRの活用について議論した特別円卓会議が行われました。円卓会議において、アフリカおよび世界の主要な開発機関、G20の参加国、国連、国際農業開発基金(IFAD)及びロックフェラー財団は、気候変動対策に脆弱な国に必要な資金を提供するAfDBとIDBの提案を称賛しました。

IMFは、Covid-19のパンデミックにより引き起こされた危機の影響に各国が対処できるよう2021年に6,500億ドル相当のSDRの歴史的な配分を発行しました。人口12億人を超えるアフリカは、配分総額の約5%に相当する330億ドルと、他の地域と比較しても最も小さい割当でした。同様に、中南米・カリブ諸国には8%のみが配分されています。

アフリカ連合(AU)は2022年2月に開催されたAU総会にて、先進国に対してアフリカへのSDR配分を少なくとも1,000億ドルに増額し、その一部をAfDBを通じて割り当てるよう要請しました。MDBs を通じた SDR のチャネリングは、2023 年 6 月にパリで開催された「新グローバル金融協定のためのサミット(Summit on a New Global Financing Pact)」で発表された MDB ビジョン ステートメントと一致しています。

AfDBとIDBは、SDRを利用してハイブリッド資本商品として組成され、AfDB と IDB の貸借対照表に資本として計上できる革新的な仕組みを開発しました。この仕組みはSDRの拠出国が引き続きこれらを準備資産として計上できるよう、加盟国間の流動性支援協定(Liquidity Support Agreement)により支えられております。

AfDBのアキンウミ・アデシナ総裁は円卓会議にて、MDBs を通じて SDR のチャネリングする意義について繰り返し述べ、「MDB sはチャネリングされた SDR を元の値の少なくとも 4 倍に増やすことができる」と述べました。また、「SDRは外貨準備資産から融資手段に変わり、適切なコストで準備資産のステータスを維持しながら開発資金を調達することができ、SDRが潤沢な国にとってはゼロコストとなる」と付け加えました。

IDBのイラン・ゴールドファジン総裁は、「SDRは気候変動の緩和と適応のための投資を拡大する上で極めて重要である。フランスによるコミットメント、日本、英国、スペインによるハイブリッド資本のSDR活用の支援の表明、またIMFが理事会の承認に向けて動いていており、SDRの再配分に向けた進展があったことを嬉しく思う。今後、MDBsを通じたSDRのチャネリングを開始するためには、少なくともあと5機関の支援表明が必要である」と言及しました。

IMFのボー・リー副専務理事はAfDBとIDBが具体的な提案を策定したことを称賛し、「IMF職員の評価に基づくと、AfDBとIDBが提案するハイブリッド資本手段は、準備資産の質の要件を満たすだろう。この提案が成功裏に実施されれば、2021年の歴史的なSDR配分が途上国にもたらすプラスの影響を増幅する上で重要な貢献となるだろう。IMFは承認に向けて動いており、近い将来理事会に諮る予定である」と説明しました。

日本政府は、提案されているハイブリッド資本に貢献するため最善の努力をすることを約束し、財務省の矢作友良審議官は、「本提案は持続可能な開発目標 (SDGs) を達成するために最も必要な資金を支援するものであり、MDBが加盟国との強力な連携をする絶好の機会である」と述べました。

フランスのエマニュエル・ムーラン財務長官は、「フランスは当初からSDR再配分を支持していた。流動性支援協定を通じて、フランスは保証を提供する用意がある」と言及しました。

スペインもSDRのチャネリングに対して支持を表明し、 IMFの国際通貨金融委員会委員長でもあるナディア・カルヴィーノ第一副首相兼経済・貿易・企業大臣は、「SDRのチャネリングは、我々が取り組むべき手段の1つである」と述べました。

英国のアンドリュー・ミッチェル外務・連邦・開発担当大臣は、「我々は流動性支援協定によるSDRファシリティの増強の可能性の検討を含め、AfDBと引き続き連携して、支援の方法を検討していく」と発言しました。

国連のリー・ジュンファ経済社会問題担当事務次長は、AfDBとIDBによる提案は「全面的な支持に値する」と述べ、未活用のSDRを持つ国々に対し、資金拠出を表明するよう呼びかけました。

ブラジルは、気候変動対策の資金を拡大するためにMDBsを通じてSDRを再配分する取り組みはG20の議題の1つであることを確認しました。

ロックフェラー財団上級研究員でCOP26議長のアロック・シャルマ氏は、AfDBとIDBによる提案への支持を表明し、「技術的な障壁は解決できる。世界で最も脆弱な立場にある人々を支援するために、政治的な意思が重要である」と言及しました。

また、IFADのアルバロ・ラリオ会長は、「解決策はすでに提供されており、今必要なのは政治的打開である」と述べました。

ケニア、セネガル、ブラジル及びアルゼンチン政府、アジア開発銀行からも支援の発言がありました。

 

プレスリリース原文はこちら(英語)。

アデシナ総裁のスピーチはこちら(英語)。

ページトップへ