クリティカルミネラル: アフリカは原鉱物の輸出から電池製造拠点へ

アフリカとアジアの投資家、起業家、実業家が一堂に会し、グリーン移行に伴うアフリカのクリティカルミネラル(重要鉱物)に対する世界的な需要増をどのように最大活用できるか、原鉱物の輸出から高付加価値製品の製造へとシフトするにはどうしたら良いかについて議論を行いました。本パネルディスカッションは、日本政府と「アフリカ民間セクター向け支援基金(FAPA)」が主催し、ハイレベルのスピーカーが登壇しました。

JBICの天野辰之常務執行役員は、「現在、輸出信用機関(ECA)の多くは開発金融へとシフトしている。JBICは日本の輸出を支援するだけでなく、日本の産業に必要不可欠な原材料を生産するプロジェクトにも融資するようになった。資金調達自体は大きな課題ではなく、あらゆる問題への専門知識やノウハウを集結させることが、具体的な利益を実現する為に重要である。」と述べました。

タンザニアとドバイに事務所を置くGreen Africa Minerals社のエグゼクティブ・ディレクターであるDr. Kodjo Busiaは、「植民地時代の原材料輸出のパターンが、アフリカに工業化をもたらすことなく継続してきたが、アフリカの天然資源の価値を高める時期が来た。」と指摘しました。エチオピアが策定した「2008年アフリカ鉱業ビジョン戦略」は、政策インセンティブ、技能開発、地域バリューチェーンを通じ、まさにこの輸出パターンの転換を図っています。

中国アフリカ民間商会の副会長であり、Rockcheck Groupの社長でもあるキャサリン・チャン氏は、「中国とアフリカの今年の貿易額は2,820億ドルに達した」と述べました。チャン氏の会社は鉄鋼製品を生産しており、年間1,000万トン以上の鉄鉱石を輸入しています。同社は自動車製造にも進出し、10カ所の水素スタンドと、太陽光発電によって生産された水素をエネルギーとする水素自動車を600台以上保有するなど、ゼロカーボンをすでに達成しています。

ナイジェリアのラゴスで電気自動車(EV)を製造するSAGLEV社のSamuel Olu Faleye氏は、「EVなしにライドシェアを行うことは事実上不可能。一方、EV購入のための資金ギャップは非常に大きい。」と述べました。

在韓南アフリカ商工会議所のキャサリン・キム氏は、貧困国からドナー国へと変貌を遂げた韓国について、「生産の87%が貿易によるもので、サプライチェーンの問題に左右される経済構造となっている。」と強調しました。このため、韓国の製造業者は新たなパートナーシップを模索するようになり、サムスンやLGといった韓国企業はザンビアの鉱物資源セクターに投資を行っています。

本パネルディスカッションに先立ち、アフリカ開発銀行グループ(AfDB)のアキンウミ・アデシナ総裁は、クロムの95%、白金族金属の90%、コバルトの3分の2、リチウムとマンガンの30%、グラファイトの20%がアフリカにあると述べ、エネルギー転換におけるアフリカの中心的役割を強調しました。EVとバッテリーの市場は、2030年の7兆ドルから2050年には59兆ドルに成長すると予測されています。アデシナ総裁は、コンゴ民主共和国にあるリチウムイオン電池工場は、米国にある同様の施設に比べ3分の1のコストで生産が可能であるとし、アフリカの競争優位性を強調しました。

AfDBのソロモン・クエノー副総裁(民間セクター・インフラ・工業化担当)は、グリーンな工業化の例としてモロッコのインフラと政策インセンティブを挙げたほか、アフリカ金融公社やAfDBを通じ、アフリカが変革への準備が整っている点を強調しました。

 

ご参照:アフリカ開発銀行ウェブサイト(英語)

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