アフリカ経済見通し2025発表:世界的な経済・政治の逆風の中でもアフリカの短期的経済見通しは堅調
2025/6/9

写真:アフリカ開発銀行(AfDB)年次総会における『アフリカ経済見通し』発表の場にて、アフリカ開発銀行 上級副総裁のマリー=ローラ・アキン・オルグバデ氏(左から3人目)、副総裁のケビン・チカ・ウラマ氏(右から4人目)および他の高官らが出席。
アフリカ開発銀行グループ(AfDB)が発表した2025年版『アフリカ経済見通し(African Economic Outlook: AEO)』によると、地政学的な不確実性や貿易摩擦が続く中でも、アフリカの経済成長率は2024年の3.3%から2025年には3.9%、2026年には4.0%に上昇すると見込まれています。
内外の課題が山積する中にあっても、アフリカは依然として顕著なレジリエンスを示しています。アフリカ開発銀行グループの2025年年次総会(コートジボワール・アビジャンにて開催)にあわせて発表された今年の報告書は「アフリカの資本をアフリカの発展のためによりよく活用する(Making Africa’s Capital Work Better for Africa’s Development)」と題され、複数の衝撃に耐えるアフリカの強さを示すとともに、変革へのポテンシャルを引き出す道筋を提示しています。
世界的な逆風にもかかわらず強い成長見通し
本報告書では、依然として多くの課題が存在するものの、明るい成長予測が示されています。
・2025年には、アフリカの21カ国が5%を超える成長を達成する見込みです。そのうち、エチオピア、 ニジェール、ルワンダ、セネガルの4カ国は、貧困削減と包摂的成長に必要とされる7%の成長率に達する可能性があります。
・アフリカの予測成長率は世界平均を上回り、アジアの新興・発展途上地域を除くすべての地域を凌ぐ見通しです。
・このようなアフリカの持続的なレジリエンスは、効果的な国内改革および改善されたマクロ経済運営に支えられています。
地域ごとの成長見通し
アフリカ各地域の経済成長見通しは大きく異なっています:
東アフリカは、エチオピア、ルワンダ、タンザニアのレジリエンスにより、2025〜2026年に5.9%の成長が見込まれ、地域別で最も高い成長率となっています。西アフリカは、セネガルとニジェールにおける新たな石油・ガス生産により、4.3%の堅調な成長を維持する見込みです。北アフリカは依然として困難な外的環境に直面しながらも、2025年には3.6%の成長が予測されています。中部アフリカの成長率は3.2%に減速、南部アフリカは、南アフリカの成長率が0.8%と低調で、全体では2.2%の成長にとどまると見通しです。
依然として深刻な課題もあります。現在、15カ国で二桁のインフレ率を記録しており、アフリカ全体で政府歳入の27.5%が利払いに充てられています(2019年の19%から大幅に上昇)。
報告書の発表にあたり、アフリカ開発銀行グループのチーフエコノミスト兼副総裁ケビン・チカ・ウラマ氏は、「アフリカは今、自らの開発を自らの資源で賄う道を模索する時である」と述べています。
潜在的な国内資源は手つかずのまま
報告書は、効果的な政策の導入により、税収および非税収から最大1.43兆米ドルの追加資源が国内から動員可能であると試算しています。アフリカには、未活用ながらも極めて大きな資源基盤があります:
・自然資本:アフリカは世界の鉱物資源の30%を保有しており、2030年までに主要なグリーン鉱物から見込まれる16兆ドルの収益のうち10%以上を獲得する可能性があります。
・人的資本:アフリカの中央値年齢は19歳と非常に若く、労働力参加率向上により年間470億ドルのGDP増加の可能性があります。
・金融資本:年金基金の資産総額は1.1兆ドルに達しており、送金コストが削減されれば、2035年までに正式な送金額は5,000億ドルに達する可能性があります。
・ビジネス資本:アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の完全実施により、輸出は5,600億ドル、所得は4,500億ドル増加する可能性があります。
資本流出への対処が急務
本報告書は、多額の資本流出がアフリカの開発を著しく阻害していると強調しています。2022年にアフリカが受け取った資金流入額は1,907億ドルに対し、資金流出は約5,870億ドルに達しました。その内訳は、不正な資金流出が約900億ドル、多国籍企業による利益移転が2,750億ドル、汚職による損失が1,480億ドルとなっています。
ケビン・チカ・ウラマ副総裁は「アフリカが自らの資本(人的、自然、財政的、ビジネス、金融)を効果的に活用すれば、世界の資本もそれに追随し、生産的な分野への投資が加速することになるでしょう。」と述べました。
政策提言
ケビン・チカ・ウラマ副総裁は次のように強調しました:
「健全なマクロ経済政策運営、質の高い制度、適切なガバナンス、そして法の支配に代わるものはありません。」
本報告書は、以下の重要分野での包括的な改革を提言しています。財政収入の強化に関しては、デジタル化による税務行政の効率化、税基盤の拡大、市民との社会契約の強化による納税遵守の促進を目指すべきとしています。さらに、自然資本の管理では、自然資源会計の義務化と、国内での付加価値創出(ベネフィシエーション)政策の強化を求めています。
また、金融市場の深化については、機関投資家の資金活用、自国通貨建て債券市場の発展、規制の調和による越境投資の促進が必要だとしています。
『アフリカ経済見通し2025年版』は、アフリカの国内資本をより効果的に動員・活用することで、持続可能な変革の可能性を引き出すための包括的な指針となっています。
プレスリリース原文はこちら(英語)