アフリカ開発銀行グループの2021年を振り返って:コロナ下でアフリカ大陸の強靭性(レジリエンス)と回復力を高める戦略を継続


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが続く中、2021年も当行はアフリカの最も弱い立場の人々を支援する取り組みを行い、大きな成果を収めました。パンデミックがアフリカ諸国に深刻な影響を及ぼす中で、当行はアフリカ大陸全体で経済と保健分野の回復力強化に貢献しました。当行は、地域ハブモデルによる国内ワクチン製造の発展を支援することを表明し、実際に進めています。当行はまた、IMFの特別引出権(SDR)の再分配を率先して主張し、低・中所得国が過去2年間で累積した公的債務に対処できるように大きな余地を提供しました。

昨年3月に当行が発表したアフリカ経済見通しでは、条件書き付きではありますが、アフリカの実質GDPは2021年に3.4%成長、2022年には観光業の再開とコモディティ価格の回復に支えられてさらに成長すると予測しています。

しかし、依然として課題は残っています。その中には、貧困ライン以下で暮らすアフリカの人々を減らすという、過去数十年にわたる成果を、パンデミックの影響が続く中でも継続していくことも含まれます。公的債務管理も課題のひとつです。

 

2021年の当行の主要な活動は下記のとおりです。

1

  • ● アデシナ総裁が、アフリカの「緑の長城」構想のチャンピオンに指名されました。アデシナ総裁は、このイニシアチブへの政治的・経済的支援の呼びかけを引き続き行っていきます(関連記事:英語日本語)。

2

  • ● 2021年から2025年にかけての新しいジェンダー戦略文書(Gender Strategy 2021–2025)を発表しました。女性や若者が出自に関係なく、チャンスの源としてアフリカ大陸の主要セクターに平等にアクセスし、生産的資源を活用できるようにすることをこの戦略で目指しています(関連文書:英語)。

3

  • ● アフリカの各国首脳は国連事務総長や国際開発金融関トップとともに、G20の債務支払猶予イニシアティブ(DSSI)の延長を要請しました(関連記事:英語)。

4

  • ● アデシナ総裁はEUアフリカ グリーン投資フォーラムに参加し、アフリカがCOVID-19から回復するにあたり、エネルギー、農業、インフラ部門に投資の機会があると述べました(関連記事:英語)。
  • ● また、アデシナ総裁は、「気候変動リーダーズサミット2021」に出席し、アフリカは気候変動危機により多大な損失を受けていると国際社会に訴えました(関連記事:英語)。

5

  • ● 2021年5月25日に発表された「政府開発援助の質に関する報告書(Quality of Official Development Assistance report)」において、アフリカ開発銀行グループの中で譲許的資金を提供しているアフリカ開発基金(ADF)は、その開発援助の質において49のドナーの中で第2位と評価されました(関連記事:英語日本語)。

6

  • ● 当行グループの年次総会は、COVID-19パンデミックのため昨年に続きハイブリッド形式で開催されました。年次総会において株主各国は当行のパンデミック対策計画案への支持を表明しました(関連記事:英語日本語)。
  • ● 6月29日から7月8日まで、当行アジア代表事務所は第3回日本・アフリカ ビジネスフォーラム(JABF 2021)をハイブリッド形式で開催しました。TICAD 8へのプレリュードとなる同フォーラムは「COVID-19時代に新しいアフリカを形作る」をテーマとして、アフリカ開発銀行の5つの優先分野(High 5s)に関連する5つのセッションと、アフリカのスタートアップ企業を紹介する「スタートアップ・セッション」を6日間で実施しました(関連記事:英語日本語)。

7

  • ● 7月13日から15日の3日間、インド工業連盟及びインド輸出入銀行主催で「第16回デジタルコンクラーベ:インドーアフリカ プロジェクトパートナーシップ」が開催されました。本イベントは「アフリカ・インドの機会を活用する―つなぐ、創る、協力する」(Harnessing the Africa-India Opportunity- Connect, Create, Collaborate)をテーマとし、医療、情報技術のデジタル化、観光、サービス業に焦点を当てました(関連記事:英語日本語)。
  • ● フィッチ・レーティングスは、アフリカ開発銀行グループの信用格付けを「安定的な見通し(a stable outlook)」とし、「AAA」に据え置くことを発表しました(関連記事:英語日本語)。
  • ● 第2回ベンチマーク債(27億5,000万ドル)を発行しました(関連記事:英語)。

8

  • ● 「G20 アフリカとのコンパクトサミット」において、世界経済の回復に格差があること及びワクチンへのアクセスが不均等であることが指摘されました。また、アフリカの経済回復を加速させるための戦略の必要性が挙げられました(関連記事:英語)。
  • ● 「アフリカ・シンガポール ビジネスフォーラム2021」において、アデシナ総裁は、パンデミックの中にあってもアフリカへの投資家の関心は失われていないと述べました(関連記事:英語)。

9

  • ● 第4回アフリカ・レジリエンス・フォーラムが開催され、COVID-19パンデミック、紛争、気候変動というアフリカが抱える3つの課題について議論されました(関連記事:英語)。
  • ● 国連総会に合わせて開催された国連食料システムサミットで、アデシナ総裁は、2030年までにアフリカは飢餓ゼロを達成できると言明しました。グテーレス国連事務総長は、当行の気候適応に対するリーダーシップを称賛し、他の機関にとっての模範であると述べました(関連記事:英語)。
  • ● 当行及びグリーン成長ナレッジパートナーシップ、並びに世界自然保護基金(WWF)は、アフリカの開発金融に自然資本を包含させるイニシアチブを立ち上げました。その目的は、アフリカの経済開発政策、金融、投資に自然資本を結びつけることです(関連記事:英語)。

10

  • ● アデシナ総裁は、アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)を当行が作成する国別戦略文書(CSP)や地域別統合文書(RISP)の中に統合させると述べました(関連記事:英語)。
  • ● 当行の保健分野における戦略文書(Strategy for Quality Health Infrastructure in Africa 2021-2030)策定の一環として、アフリカ54か国の保健担当大臣とコンサルテーションを行いました(関連記事:英語)。
  • ● ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、当行の長期発行体格付けを「AAA」に据え置き、安定的な見通しを示しました(関連記事:英語日本語)。

11

  • ● 当行の開発効果年次報告2021で、アフリカ諸国が直面する課題、特にCOVID-19に起因する健康上の危機に対する当行の対応について取りまとめました(関連記事:英語日本語)。
  • ● 10月31日から11月12日にかけて英国グラスゴーで開催されたCOP26で、当行は「気候変動とグリーン成長枠組み」を発表しました。2022年11月にはエジプトでCOP27が開催される予定です(関連記事:英語日本語)。

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  • ● 12月1日~3日に開催が予定されていたアフリカ投資フォーラム(AIF)は、COVID-19パンデミックによる健康上の懸念から無期限に延期されました。AIFは「マーケット・デイ」というユニークなイベントを通じて、毎年投資家を集め、多くのプロジェクト・投資案件を議論しています。2021年のAIFはコートジボワールの首都アビジャンで開催される予定でした(関連記事:英語日本語)。
  • ● 12月2日~4日、カーボベルデでアフリカ経済会議(AEC)が開催されました。この会議では、コロナ後のアフリカ開発に向けての資金調達に焦点が当てられました。AECではアフリカがこの重大な局面から脱出するための重要な経済およびガバナンスの改革について力強い提言が行われました(関連記事:英語)。
  • ● 12月7日、日本政府が主催した「東京栄養(N4G)サミット2021」において、アデシナ総裁は、当行が2021年から2025年の間に、栄養スマートな投資を毎年10%以上拡大し、投資総額を13億5000万ドルにするというコミットメントを発表しました。当行は、本サミットの成果文書「東京栄養宣言(グローバルな成長のための栄養に関する東京コンパクト)」をエンドースしました(関連記事:日本語)。
  • ● 12月7日~9日、アフリカ開発基金(ADF)の中間レビューがオンライン形式にて開催されました。当行理事やその他関係者が、アフリカ大陸で最も脆弱な37カ国を対象とするADFのオペレーション及びそのインパクトについて評価を行いました(関連記事:英語)。
  • ● 12月9日、当行による協力のもと、アフリカ韓国ビジネスフォーラム2021が開催されました。同フォーラムは「アフリカの統合:改革の力を持たせるパートナーシップにむけての新時代」(Integrate Africa, New Era for Transformative Partnership)をテーマに議論が行われました(関連記事(外部):英語)。
  • ● 2019年のノーベル経済学賞受賞者であるエステル・デュフロMIT教授は、2021年のコフィー・アナン記念賢人講演を行い、気候変動への対処を技術革新だけに頼ってはならないと警告し、消費の習慣を変えることも重要であると述べました。また、同教授とアデシナ総裁は、GDPはせいぜい国の富を測るにすぎない不完全な尺度であることに同意しました(関連記事:英語)。 

 

本記事の原文はこちらをご覧ください。なお本記事は日本語版作成に当たって一部内容を加筆・修正しています。

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